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Ending Homelessnessってどういうこと?

大規模イベントで排除されてきたホームレスの人々

 

オリンピックのような大規模公共イベントの開催地では、過去には路上ホームレスを追い出したり、一時的な施設へ集めるなどの排除・収容が起きてきました。2020年の夏季オリンピック開催地である東京でも、そうしたホームレスの人への排除が起きたり、また直接的な排除ではなくとも、住宅価格の高騰や簡易宿泊所などが旅行者を積極的に泊めることにより、屋根のある場所に留まれなくなる人々が出るのではないかと懸念されています。一方、現在日本のホームレス支援の根拠法となっているホームレス自立支援法は約2年後に失効し、今年度より施行の生活困窮者自立支援法に一本化される予定です。しかしながら新法下では路上生活が長期に渡るホームレス等への支援は不十分になることが予想されています。

こうした状況下でホームレスの人々が制度から「見えなく」なることは、彼らの社会的立場をより脆弱なものにすることになるでしょう。路上ホームレスの人々だけでなく、いわゆるネットカフェや簡易宿泊所など、不安定な居住環境にある人が数多くいることや、オリンピックに伴う住宅価格の高騰など、このままでは東京の居住環境はますます優しさを欠き、多様性を失っていくことが危惧されます。

 

 

海外の様々なグッドプラクティス

 

こうした状況ではありますが、オリンピックのようなイベントは、大きな社会的インパクトとともに、状況を好転させる契機にもなり得るのではないでしょうか。私たちは、これまでオリンピックに際するホームレス支援に関して、2000年のシドニーオリンピック、2012年のロンドンオリンピックでの実践からヒントになるものを模索してきました。

2000年のシドニー五輪では、「ホームレスだからという理由だけで公共空間から排除されない」ことを宣言する、公共空間にいる権利を認めるプロトコル(Protocol for Homeless People in Public Places)が公共空間管理やホームレス支援の行政機関の間で部門横断的に結ばれました。このプロトコルはオリンピックから10年以上経た現在でも生きています。

また、2012年のロンドンオリンピックでは、「路上生活(ラフスリーピング)を終わらせる」という意欲的な目標を掲げ、慢性的なホームレスの方をサポートするための行政-NGOの連合を組織し、どのような支援がなされているかを個人ごとに追えるデータベースを構築しました。さらに、住宅セクターと福祉セクターによる、協働関係が進展しました。

(これらの詳しい情報は、Articlesよりご覧いただけます。)

 

東京でもオリンピックをこのような良い契機とし得るために、どのような可能性があるでしょうか。

 

 

「ホームレス状態を終わらせる」という目標を掲げること

 

私たちは、ホームレス支援を行う非営利組織(NPOなど)の方、行政の方、住宅セクターの方々を今後広く巻き込みながら、『ホームレス状態を終わらせること』を目標に掲げたいと考えています。ここでいうホームレス状態とは、路上生活に加え、インターネットカフェや簡易宿泊所を転々とするような不安定な居住形態も含みます。

私たちは以前、このプロジェクトの目標として『ホームレス・ゼロ』という言葉を用いました。これは、ホームレスの人を追い出したり、無理矢理に施設に入ってもらってゼロにする、という意味では全くありません。そうではなく、ホームレスの人々を包摂する社会を目指し、それに向けて行動を起こして行きたいという決意を表す言葉として用いたのです。

しかしながら、私たちの新たな目標は『ホームレス状態を終わらせること』です。活動を進める中で、私たちが本当に実現したい社会は「ホームレスが一人もいない社会」ではなく、「ホームレス状態が社会に存在するときに、皆がそれを自分たちの問題だと考え、その状態をなくすために働きかけ続ける社会」だという思いに至りました。路上で寝ている人がいても、皆が見て見ぬフリをして素通りしていく社会ではなく、皆がその人のことを気にかけ、支え合おうとする優しい社会、優しい都市を私たちは目指します。

 

 

具体的には、次に示す2点の実現に向けて、取り組んでいきます。

 

①東京オリンピックに関するホームレスの追い出し・排除を防ぐこと

→シドニー五輪で締結された、『ホームレスの公共空間にいる権利』を認めるプロトコルを日本でもつくること

 

②路上ホームレス状態、および不安定居住(これらをまとめて広義のホームレス状態といいます)の問題を解決するために、住宅セクターと福祉セクターの協働体制を築くこと

→ハウジング・ファースト・モデルを実現するために、ホームレス支援や生活困窮者支援の福祉セクターの連携を強化し、同時に住宅セクターのもつ住宅を社会的資源として利用可能にすること

 

 

現在アメリカやオーストラリアでは、ハウジング・ファーストと呼ばれる、中間的施設を経ずに恒久住宅への入居を推進する支援政策が進められています。入居後の住宅での生活への定着率や、社会的コストの面から、近年評価を高めている支援モデルです。一方でこうした数値目標を伴った『ホームレス状態にある人を減らす』という目標は、ともすれば制度的・空間的な排除によって『見えなく』することや、あるいは施設等への『収容』的な措置につながる危険も孕んでいると指摘されます。

 

ですから、私達は上記①と②を同時に達成することを目標にしたいと考えます。

『ホームレス状態にある人を減らす』ということと、『公共空間にいる権利を認める』ということは、一見矛盾することに感じられるかもしれません。しかしながら、本当に『排除』や『収容』することなく、『ホームレス状態にある人を減らす』ためには、『公共空間にいる権利』も同時に果たされるべきものなのです。これはすなわち、排除しないと決めない限り、本当の包摂にはならない、ことを意味すると言えます。

Without determination not to exclude homeless people,inclusion of them will never be achieved!!

 

 

今後、様々な方にご協力をいただきながら、取り組んでいきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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